果物の名前の漢字表記とその漢字の意味や成り立ち

果物の名前を平仮名や片仮名ではなく、漢字で表記する場合が多々あります。しかし、どのようにその漢字ができたのか、またはなぜその漢字が当てられたのかということまで考えたことのある人は少ないかもしれません。ここでは、日本でよく食べられている果物の名前の漢字表記とその漢字の意味や成り立ち、ことわざを紹介します。

果物の名前の漢字表記とその意味

・苺 (いちご)
いちごは、日本の古い書物『古今和歌集』などには「イチビコ」として登場しています。書物によって漢字の表記は異なりますが、この「イチビコ」が転じて「いちご」になったと考えられています。「苺」という漢字は、「母」が乳房を表す漢字であることから「乳首のような実がなる草」を表現したものとする解釈と、「母」が子を産むように「どんどん子株を生み出す草」を表現したものとする解釈があります。

・梅(うめ)
中国語で「梅」は「メェィ」のような発音です。日本人にとってこれは「ウメ」のように聞こえたために「梅」は「ウメ」と言われるようになったようです。

・李(すもも)
すももの語源として、見た目が桃に似ており酸味があるから「酢桃(すもも)」としたという説や、産毛がない桃だから「素桃(すもも)」としたという説があります。「李」の「子」は実がなるさまを表しています。

・桃(もも)
実が赤いから「燃実(もえみ)」、毛が生えているから「毛毛(もも)」、実がたくさんなるから「百(もも)」もしくは「実々(みみ)」など、ももの語源となったとされる言葉は数多く存在します。「桃」の「兆」は左右二つに離れるさまを示す漢字で、ももの果実の見た目を表しています。

・梨(なし)
果肉が白いから「中白(なかしろ)」、果実の中心が酸っぱいから「中酢(なす)」、風があると実らないから「風無し(かぜなし)」など、なしの音の由来は諸説あります。「梨」の「利」は「鋭い」や「よく切れる」ことを意味し、シャリシャリとした食感のなしの果実を示しています。

・柿(かき)
かきの音の語源として考えられているのは、硬い実だから「カタキ(堅)」、輝きのある実だから「カカヤキ(輝)」、赤い実だから「アカキ(赤木)」もしくは「アカキミ(赤き実)」などの言葉です。「柿」の漢字は中国語の表記をそのまま用いています。中国語の「柿」は「シー」のような音です。

・栗(くり)
くりは果皮の色が黒色だから「クロ(黒)」または「クロミ(黒実)」、実が石に似ているから古語で石を表す「クリ」、くりを意味する朝鮮語である「クル」などの言葉が語源になったのではないかと考えられています。「栗」の漢字はくりの実が入っている「イガ」が木に付いている様子を表しています。

・杏子(あんず)
「杏子」は中国語であり、「杏」は木の名前、「子」は果実を意味します。日本では「杏」の一文字で「あんず」と読んだり、「唐桃(からもも)」と言ったりもします。

・枇杷(びわ)
果実が楽器の琵琶に似た形をしているため、この名で呼ばれるようになりました。

・桜桃(おうとう)
「桜桃(おうとう)」とはさくらんぼの正式名称です。「さくらんぼ」という名前は桜の実を指す「桜ん坊」に由来すると言われています。

・林檎(りんご)
「林檎」の「檎」は木と網で取り押さえられた鳥を表した文字です。つまり「林檎」は甘い果実に釣られて林に鳥がやってくる様子を表しています。

・西瓜(すいか)
漢名である「西瓜」という字は、中国から見て西に位置するウイグルから伝わった植物であることに由来すると考えられています。

・甜瓜(てんか)
「甜瓜(てんか)」とは「メロン」のことです。非常に甘いウリ科の植物であることからこの漢字が当てられました。

・蜜柑
蜜のように甘い柑橘類ということでこの漢字が当てられたと考えられます。

果物の漢字が入ったことわざ

・桃栗三年柿八年
(ももくりさんねんかきはちねん)
種をまき実が成るまでに、桃と栗は三年、柿は八年の歳月を必要とすることから、物事を成し遂げたり完結するまでには相応の年数がかかるということを例えたことわざです。「桃栗三年柿八年」の後に、「柚は九年になりかかる」「枇杷は九年でなりかねる」「梅は酸いとて十三年」などを続けて言う場合もあります。

・桃李もの言わざれども下自ら蹊を成す
( とうりものいわざれどもしたおのずからけいをなす )
中国の史記「李将軍伝賛」の一節を引用したことわざです。桃や李は何も言わないけれども、美しい花を咲かせ美味しい実を付けるので、そこには自然に人が集まり、下に小道が出来る、ということから、招かなくとも徳望のある人の周囲には沢山の人が集まるということを意味します。

・李下に冠を正さず
( りかにかんむりをたださず )
中国古典詩にある「君子行」の一節を引用したことわざです。李の木の下で冠を直すと、李の実を盗んでいるように見えてしまうということから、 他人から誤解されやすいことはしてはいけないということを意味します。

・梨の礫
( なしのつぶて )
「梨」は「無し」を意味しています。礫とは小さな石のことです。投げた小石は返ってこないことから、便りを出しても返事のないこと、音沙汰のないことを言っています。

・蜜柑が黄色くなると医者が青くなる
( みかんがきいろくなるといしゃがあおくなる )
蜜柑が黄色く色づいてくる秋は、人にとって過ごしやすい季節で病人が少ないことを表したことわざです。
・火中の栗を拾う
( かちゅうのくりをひろう )
自分の利益にならないのに、他人の利益のために危険を冒すこと、それは愚かであるということを表したことわざです。

・渋柿の長持ち
( しぶがきのながもち )
そのままでは渋くて食べられない渋柿は収穫されることなく長く木の枝に残ることから、取り柄のない人や悪人が長生きしてしまうことを意味します。また、欠点があることが必ずしも不幸につながることはない、という意味で使われることもあります。

けちん坊の柿の種
(けちんぼうのかきのたね)
柿を食べ終えて残った柿の種さえも惜しんで人に譲らない人、という意味の言葉で、極端にけちな人を罵るのに使われる言葉です。

梅はその日の難のがれ
(うめはそのひのなんのがれ)
日本の伝統的な食品である梅干しには疲労回復や殺菌効果があります。そんな梅干しを食べた日は、一日何事もなく無事に過ごせるという意味のことわざです。